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もう悩むことはない!自筆証書遺言と公正証書遺言の違い

遺言の方式は「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類が一般的ですが、どちらを選ぶべきか悩む方も多いでしょう。違いが分からなかったり、自筆証書遺言でも公正証書遺言の同等の効果が得られるか不安があったりするなど、作成にあたって迷いが生じがちです。ここでは、自筆証書遺言と公正証書遺言の押さえておくべき特徴を紹介し、違いを踏まえて選び方を解説します。

自筆証書遺言とは

自筆証書遺言は、遺言者が自らの意思を書面に記す最も一般的な遺言形式です。遺産相続の際のトラブルを防ぎ、遺言者の意思を確実に実現するための重要な手段となります。その手軽さから多くの人に選ばれる一方で、作成方法や保管には注意が必要です。近年では法務局による保管制度も始まり、より安全に自筆証書遺言を残せるようになりました。

自筆証書遺言の作成方法

自筆証書遺言の作成には、いくつかの重要な要件があります。まず、遺言の本文は全て自筆で記載しなければなりません(財産目録に限りパソコン等で作成することが可能です)これに加え、日付と署名、押印は必須とされ、これらが欠けると遺言が無効になります。さらに、訂正する場合は、該当箇所に二重線を引き、訂正した旨を記載し、署名と押印をしなければなりません。

上記の要件は相続法の条文で明記されているルールで、しっかりと漏れなく満たすことで法的に有効な自筆証書遺言となります。

死後は家庭裁判所の検認が原則必要

自筆証書遺言は、遺言者の死後、原則として家庭裁判所による検認が必要です。検認とは、遺言書の形状や内容を確認し、相続人に遺言の存在を知らせる手続きです。検認の申立ては、遺言書を発見した相続人等が行い、通常1か月程度かかります。検認を経ずに遺言書を開封してしまうと、遺言の効力に影響を与える可能性があるため、注意が必要です。

法務局で利用できる保管制度とは

2020年7月から、自筆証書遺言保管制度が始まりました。この制度では、法務局が遺言書を保管することで、紛失や改ざんのリスクを軽減し、相続手続きをスムーズにします。保管の申請にあたっては1通につき3,900円の手数料がかかり、本人が法務局に出頭して遺言書と本人確認書類および申請書を提出する必要があります。

保管制度を利用した自筆要所遺言は、原則必要とされる検認が不要になります。また、希望に応じて、遺言者の死後、法務局から相続人そのほかの関係者に遺言書の保管通知が送られます。安全な保管場所を確保する必要がなくなり、紛失・滅失リスクが低くなるのも、制度利用の強みと言えるでしょう。

自筆証書遺言のメリット・デメリット

自筆証書遺言ならではの利点は、第三者や特別なツールを挟むことなく、秘匿性を維持しながら手軽に作成できる点です。その一方で、往々にして本人しか内容がわからない状態で作成されることから、形式不備や文意不明瞭を理由に無効になるリスクがあります。作成にあたっては、これらのメリット・デメリットの理解が欠かせません。

■メリット
・紙とペンがあればすぐ作成できる手軽さ
・作成費用がほとんどかからない
・内容を他人に知られずに作成できる
・遺言者の意思をダイレクトに表現できる
・急を要する場合でも迅速に対応可能

■デメリット
・形式不備で無効になるリスク
・遺言内容が不明確になるリスク
・相続人間の争いを生むリスク
・紛失や改ざんの危険性(法務局保管制度を利用しない場合)
・遺言者の意思能力に関する疑義が生じやすい

公正証書遺言とは

公正証書遺言は、法律の専門家である公証人の立会いのもと作成される遺言書です。公証人が遺言者の意思を確認し、法的な要件を満たすように作成するため、高い信頼性と安全性を持ちます。自筆証書遺言と比べて手続きは複雑になりますが、相続開始後になってからのトラブルを防ぐ上では確実な手段とされています。

公正証書遺言の作成方法

公正証書遺言の作成は、公証役場で行います。まず、公証人と事前相談を行い、遺言の内容を決めます。作成当日は、遺言者本人が公証役場に出向き、2名以上の証人の立会いのもと、公証人に遺言内容を口述します。公証人がそれを筆記し、内容を確認した後、遺言者と証人が署名・押印して完成します。

作成当日に必要な書類は、遺言者の印鑑証明書、戸籍謄本、不動産を相続させる場合は登記事項証明書などです。また、証人2名の本人確認書類も必要となります。遺言者が高齢や病気の場合は、公証人が出張して作成することも可能です。

公正証書遺言の作成費用

公正証書遺言の作成費用は、公証役場が指定しており、遺言の目的価額(遺言で処分する財産の価額)に応じて決まります。以下の表は、現在指定されている公正証書遺言の作成手数料であり、1億円以下の場合は11,000円の遺言加算があります。カッコ内に示すのは、その遺言加算を加えた手数料です。

目的価額 手数料
100万円以下 5,000円(16,000円)
100万円超200万円以下 7,000円(18,000円)
200万円超500万円以下 11,000円(22,000円)
500万円超1,000万円以下 17,000円(28,000円)
1,000万円超3,000万円以下 23,000円(34,000円)
3,000万円超5,000万円以下 29,000円(44,000円)
5,000万円超1億円以下 43,000円(54,000円)

死後の家庭裁判所による検認は不要

公正証書遺言は、確定判決などと同等の効果を持つものとして作成され、原本も公証役場で保管されると定められています。こうした信頼性の高さから、自筆証書遺言とは異なり、家庭裁判所による検認がなくとも、内容の有効性などが担保されます。

遺言の存在を知らせる手続については保証されていませんが、心配無用です。死後、遺言検索システムを利用し、全国の公証役場で遺言を検索できるためです。謄本の取得も、遺言者の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等を提示することで、相続人であることを証明し請求できます。これらの手続きにより、相続人の負担が大幅に軽減されます。

公正証書遺言のメリット・デメリット

公正証書遺言は、法的な確実性が高く、相続手続きの簡素化にもつながります。しかし、費用や手続きの複雑さがネックとなる場合もあります。遺言作成の際は、自身の状況や希望に合わせて、最適な方法を選択することが大切です。

■メリット
・公証役場による作成支援→内容不明などの理由で無効になることがない
・原本を安全な状態で保管してもらえる
・検認不要のため相続人の手続負担を軽減できる
・遺言者の意思能力が証明しやすい
・相続トラブルを未然に防ぐ効果が高い

■デメリット
・作成費用が高額になる
・証人の確保など、作成にあたって一定のハードルがある
・内容の秘密保持が難しい(手元にある謄本を見られるなど)
・作成に時間がかかる
・急な変更が難しい

自筆証書遺言と公正証書遺言の違い

自筆証書遺言と公正証書遺言は、遺言の二大形式として広く利用されています。両者には作成方法や保管、費用などさまざまな違いはありますが、きちんと作成した場合の効果に違いはありません。重要なのは、状況に適した方法を選択することです。

形式的要件を満たせば効力は同じ

自筆証書遺言と公正証書遺言は、それぞれの形式的要件を満たせば、法的効力に違いはありません。遺言した場合に効果を持つ項目・持たない項目も全く同じです。ただし、複数の遺言書が存在する場合は、原則として後に作成されたものが優先されます。

紛失・改ざんリスクはどちらも小さくできる

公正証書遺言は公証役場で、自筆証書遺言は保管制度による法務局での預かりがあるため、紛失・改ざんなどのリスクなく安全に保管できる点も同じです。どちらの遺言形式でも、内容の確認は謄本または内容証明書で対応するため、第三者が原本に触れる機会がなくなり、改ざんのリスクがさらに低減されます。

作成・保管手数料は自筆証書遺言が安い

費用面では、自筆証書遺言が圧倒的に安価です。自筆証書遺言の法務局保管手数料は1通につき3,900円のみですが、公正証書遺言の場合は最低16,000円から遺産の価額に応じた費用が発生します。もっとも、自筆証書遺言=安いとは限りません。そのリスクを踏まえて、作成後に専門家のチェックを受けたり、相続時に解釈のサポートを受けたりする可能性があるため、結果的に追加コストが発生する場合があります。

自筆証書遺言のほうが死後トラブルになりやすい理由

自筆証書遺言は、公正証書遺言に比べて死後のトラブルになりやすい傾向があります。形式不備(訂正のルールなど)については、法務局の保管制度を利用することで形式面のチェックは受けられますが、内容の妥当性までは確認されません。そのため、文意不明瞭による無効のリスクは残されています。

また、自筆証書遺言だと、遺言者の意思能力に関する疑義が生じやすいのも特徴です。特に認知症と診断された後に作成された場合、有効性が問題になることがあります。さらに、手書きかつ自分で封印した形式であることが、相続人間の不信感や疑念を発生させやすい点も否めません。これらの理由から、自筆証書遺言は相続トラブルのリスクが高くなる傾向があります。

自筆証書遺言と公正証書遺言の選び方

それでは、実際のケースに当てはめてみると、それぞれ自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらが適していると言えるのでしょうか。いくつかケースを挙げ、どのような理由で適しているのか解説してみましょう。

自筆証書遺言が適しているケース

自筆証書遺言が適しているのは、比較的財産の規模が小さい場合や、緊急性が高い場合、費用を抑えたい場合などです。具体的には、次のようなケースが挙げられます。

遺言内容が比較的単純な場合

相続させる財産や相続人が少なく、遺言の内容が簡潔である場合は、自筆証書遺言が適しています。例えば、「すべての財産を配偶者に相続させる」といった単純な内容であれば、自筆証書遺言で十分対応できます。

相続財産が少額の場合

相続財産の総額が比較的少ない場合、公正証書遺言の作成費用が相対的に高くなる可能性があります。そのような場合は、費用対効果の面から自筆証書遺言が望ましいでしょう。

相続人間の関係が良好な場合

相続人同士の関係が良好で、遺言内容について争いが起こる可能性が低い場合は、自筆証書遺言で十分かもしれません。ただし、この場合でも法務局保管制度を利用することをお勧めします。

緊急に遺言を作成する必要がある場合

突然の入院や手術前など、急いで遺言を残す必要がある場合は、自筆証書遺言が適しています。公正証書遺言の手続きには時間がかかるため、緊急時には自筆証書遺言が唯一の選択肢となることもあります。

費用を抑えたい場合

遺言作成にかける費用を最小限に抑えたい場合は、自筆証書遺言が最適です。特に法務局保管制度を利用しても3,900円で済むため、コスト面では大きな利点があります。

公正証書遺言が適しているケース

公正証書遺言が適しているのは、財産の規模が大きい場合や、状況に複雑性が認められる場合、遺言の方法に信頼性を求める場合です。具体的には、次のようなケースが挙げられます。

遺言内容が複雑な場合

相続財産が多岐にわたる場合や、相続人が多数いる場合など、遺言内容が複雑になる場合は公正証書遺言がお勧めです。公証人のサポートを受けながら作成できるため、法的に問題のない明確な遺言書を作成できます。

相続財産が高額の場合

相続財産が高額である場合、相続税の問題や相続人間の争いが生じやすくなります。このような場合は、公正証書遺言を選択することで、遺言の確実性を高め、将来の紛争リスクを軽減できます。

相続人間の関係が複雑な場合

再婚家族や相続人間の関係が良好でない場合など、相続を巡って争いが起こる可能性が高い場合は、公正証書遺言が適しています。公正証書遺言は法的な信頼性が高いため、相続トラブルを未然に防ぐ効果があります。

遺言者の判断能力に不安がある場合

高齢や病気により、遺言者の判断能力に不安がある場合は、公正証書遺言を選ぶべきです。公証人が遺言者の意思能力を確認しながら作成するため、後に遺言の有効性が争われるリスクを低減できます。

まとめ

自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらを選ぶかは個人の状況によって異なります。自筆証書遺言は手軽さと低コストが魅力ですが、形式不備や文意不明瞭による無効のリスクがあり、トラブル防止のための対応が必要です。一方、公正証書遺言には上記のようなリスクはなく、信頼性・安全性が高いものの、高額な費用を要するのはネックです。

どちらを選ぶにせよ、遺言は大切な人々の将来に関わる重要な作業です。本記事の情報を参考に、自身の状況をよく考え、必要に応じて専門家に相談しながら、最適な遺言形式を選択すると良いでしょう。