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会社の役員が交代するのは登記の事由にあたり、期限内に役員変更登記を申請しなければなりません。実際には続けて役員を職務に務める場合であっても、任期満了後の「重任」にあたり役員変更登記の義務があります。
役員変更登記の必要性を理解していなかったなどの理由で申請をうっかり忘れてしまうと、行政罰やみなし解散などのリスクが生じます。ここで、登記の事由や期限、手続方法について整理しましょう。
会社の役員(取締役、会計参与および監査役)に変更があった場合、変更が生じた日から2週間以内に登記申請しなければなりません。この期限を過ぎてしまうと、予期せぬペナルティが科される可能性があるため、正確な知識をもって対応しなければなりません。
役員変更登記が必要となるのは、単に役員が交代するときだけではありません。具体的には、新たな役員の「就任」、任期満了による「退任」のほか、同じ役員が任期満了後も職務を続ける「重任」のケースでも登記は必須です。
同様に、役員の辞任・解任または死亡の際にも登記申請する義務があります。ほかには、代表取締役の氏名や住所の変更があったときも登記しなければなりません。
役員変更登記の申請期限は、原則として変更が生じた日から2週間以内です(会社法第915条第1項)期限経過にカウントされる日には土日祝も含まれます。
変更が生じた日とは、株主総会で役員の選任が決議された日や、役員が辞任した日などを指します。たとえば、4月1日に株主総会で新しい取締役が選任された場合、4月15日までに登記申請を完了させなければなりません。
登記懈怠となった場合は、法的・社会的に重大な不利益が生じます。必要ないと誤解していた・うっかり手続し忘れただけであったとしても、裁判所からの過料や社会的信用の低下、さらには法人の解散につながる恐れがあります。
役員変更などの登記の事由が発生したにもかかわらず期限内に申請しなかった場合、会社法に基づき「過料」が科されることがあります。これは刑事罰の「罰金」とは異なり、行政上の制裁にあたります。過料の金額は数万円から10万円前後が一般的で、長期間放置した場合や悪質と判断されれば、上限である100万円まで課される可能性もあります。
役員変更登記を怠ると、会社の情報が最新でない状態が続きます。この結果、取引先や金融機関、官公庁などから「管理が不十分な会社」とみなされ、信頼を失う危険があります。とくに、融資や新規取引の審査時には登記簿の最新性が厳しくチェックされるため、商談や契約締結時に思わぬ支障が生じることが少なくありません。
会社法上、登記が12年間全く更新されない場合、法務局の職権で「みなし解散」の手続がとられることがあります(会社法第472条、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第149条及び第203条)みなし解散に関する公告があったときは、2か月以内に「まだ事業を廃止していない旨の届出」をしなければなりません。
会社の役員変更登記は、登記申請書そのほかの添付書類を用意し、本店または主たる事務所の所在地を管轄する法務局・登記所で行う必要があります。事前準備があればオンライン申請ができる一方で、書面による申請も可能です。
役員変更登記の手順を簡単に解説すると、次のとおりです。
役員変更登記の申請をオンラインで行う場合は、マイナンバーカードとICカードリーダーを用意し、申請用総合ソフトや電子証明書などの準備をしなければなりません。オンライン申請では、申請および申請状況の確認がスムーズです。
書面による申請書では、登記申請書を自分で作成する方法と、専用のソフトで作成するQRコード付きの申請書を利用する方法があります。電子証明書の取得が間に合っていない場合は、QRコード付きの登記申請書を利用した書面申請で同様のメリット(オンラインでの申請状況の確認など)があります。
役員変更登記のための必要書類には、株主総会議事録などのさまざまな添付書類が必要です。役員変更の種類によって異なりますが、株式会社の場合には下の表のような書面を提出しなければなりません。
必要書類 | 概要 |
株主総会議事録 | 株主総会で役員を選任した旨を証する書面 |
株主リスト | 株主の氏名または名称、住所及び議決権数等を証する書面 |
就任承諾書 | 役員就任を承諾する旨の書面 |
取締役会議事録 | 取締役会設置会社において役員の全員が重任する場合に必要となる書面 |
定款など | 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を証する書面 |
本人確認書類 | 運転免許証のコピーなど(新任の役員がいる場合に要) |
印鑑証明書 | 登記所に届け出た印鑑のもの(新任の役員がいる場合に要) |
委任状 | 司法書士が代理するケースにおいて委任権限を証明する書面 |
辞任届 | 登記所に届け出た印鑑で押印された書面(役員辞任の場合) |
死亡の証明 | 死亡届、法定相続情報一覧図の書面(役員死亡の場合) |
登記申請書は申請用総合ソフトで作成できますが、ソフトの準備が整わない時は所定の様式で作成します。記載例はケースごとに法務局のWebサイトで確認可能です。
役員変更登記の申請では、申請方法によらず登録免許税が必要です。登録免許税の額は、資本金1億円以下の株式会社は1万円、1億円を超える場合は3万円となるのが原則です。登録免許税の納付方法は、書面申請の場合だと収入印紙、オンライン申請の場合ではインターネットバンキングなどを利用した電子納付となります。
申請後は、履歴事項全部証明書を取得して登記完了を確認しましょう。
役員変更は登記の事由にあたり、2週間以内に登記申請する義務があります。数日、ともすると数週間程度の遅延は問題にならない場合が多いものの、会社の信用や法的リスクを考慮するとあまり放置できません。
組織の変更や役員の続投に伴う判断は、商業登記の専門家である司法書士への相談をおすすめします。役員変更などの登記の事由が発生する場合においては、司法書士に申請の代理を依頼することで、事前準備などの煩雑な作業に追われることなくコア業務に集中できます。