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遺言書がないまま相続が始まると、本人の意思がわからない状況で遺産分割や各種手続きを進めざるをえなくなり、その過程で相続トラブルに発展することがあります。自分の財産を最後にどうするか決める「遺言書」があれば、本人の希望に法的な効果を持たせることで、争いのきっかけをなくせます。
ここでは、相続トラブルが起きるしくみから遺言書を用意するメリットを解説し、実際に遺言書を作成するときの書き方を解説します。
遺言書は、生前のうちに遺産をどう分割するか書面にまとめておくことで、相続開始時に記載のある内容を実現する書面です。遺産の名義変更(相続登記など)のときに遺言書があれば、その原本で手続きでき、あらためて遺産分割に関する書面を作成する必要がなくなるのも便利です。
相続では、遺産分割の内容をめぐって家族が対立したり、手続きを進めたくてもスムーズに協力できなかったりすることがあります。このような問題を解決してくれるのが遺言書です。
相続が開始したときに相続人が複数いて、これらの相続人がどのように財産を受け取るか決まっていないときは、下記いずれかの方法で遺産分割を行います。
● 法定相続人全員で話し合って分割する(遺産分割協議)
● 法律で決められた割合に沿って分割する(法定相続)
有効な遺言書がない相続で一般的なのは、相続人それぞれの希望をすり合わせて取り分を判断する「遺産分割協議」です。遺産分割協議に参加できるのは相続人のみで、内縁のパートナーなどの法的な権利のない人は参加できません。
上記の方法で財産の分け方に合意できたときは、実際に財産の所有権を移転させるための手続きを行います。具体的には、不動産の所有権移転登記(相続登記)や預貯金の払戻しなどが必要となり、それぞれ「遺産分割協議書」を作成して提出しなければなりません。
財産を所有する人がいない状態での「家族会議」ともいえる遺産分割協議では、予想もしなかった対立が生じがちです。これまで円満だった家族関係が、相続を機に崩れてしまうことも珍しくありません。
よくあるのは、高額かつ分割しにくい財産を巡る対立です。ほかにも、本人と一部の同居親族だけが知る財産の存在が問題になったり、生前の負担や贈与をめぐって後からもめごとが起きたりすることがあります。下記はその典型的な例だといえます。
● 空き家となった実家の扱いを巡って対立する
● 預金口座について「残高を使い込んでいる」と主張される
● 遺産分割で生前贈与を考慮する・しないを巡って対立する
● 生前の介護の担い手の取り分が少なく、不満が残る
ほかにも「相続人の一部と連絡がとれず、手続きに必要な協力を得るのが難しい」といった問題が起こることもあります。高齢者や遠方の親族が法定相続人となるケースでも、遺産分割協議書の作成に手間取るなどの問題が起きがちです。
相続開始時、あらかじめ遺言書で財産の分け方が明確に指定されていれば、意見対立や連絡の不通による手続きのストップといった問題は防げます。話し合いの場や、遺産分割協議書を共同で作成するといった手順そのものが基本的には不要となるためです。
また、遺言書があれば、内縁の妻や長年お世話になった知人、そのほかにも相続人ではない孫など、法定相続人ではない人にも財産を遺すこと(遺贈)が可能です。相続税の2割加算などに注意を払う必要はあるものの、感謝の気持ちの伝達や、生前家族で合意したことの実現にあたっては、遺言書は必須だといえます。
遺言を書くときのポイントは、法律で定められたルールを守りながら「誰に、どの財産を、どのように遺したいのか」を具体的かつ明確にすることです。ここでは、全文手書きで作成する自筆証書遺言と呼ばれる方式に沿い、下の文例を使って遺言書の書き方を順に確認してみましょう。
遺言太郎(昭和〇〇年〇月〇日生)は、次のとおり遺言する。
第1条 遺言者は、遺言者が有する下記の財産を、妻である遺言花子(昭和〇〇年〇月〇日生)に相続させる。
(1)土地
所在:東京都新宿区〇〇
地番:〇番〇
地目:宅地
地積:〇〇.〇〇平方メートル
(2)建物
所在:東京都新宿区〇〇 〇番地〇
家屋番号:〇番〇
種類:居宅
構造:木造スレート葺2階建
床面積:1階 〇〇.〇〇平方メートル、2階 〇〇.〇〇平方メートル
第2条 遺言者は、遺言者が有する下記の財産を、長男 遺言一郎(平成〇年〇月〇日生)に相続させる。
(1)預貯金
〇〇銀行 〇〇支店
普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇
(2)株式
△△株式会社の株式 〇〇〇株
第3条 遺言者は、本遺言に記載のない遺言者の有するそのほかの財産一切を、妻 遺言花子に相続させる。
第4条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として、妻 遺言花子を指定する。
【付言事項】
妻の花子へ。長年にわたり支えてくれて本当にありがとう。これからも安心して自宅に住み続けてほしいと思い、家と土地をあなたに残します。 長男の一郎へ。お前が社会人として立派に独り立ちしてくれたことを誇りに思います。預貯金と株式は、お前の将来のために役立ててください。 家族みんながこれからも仲良く、助け合って生きていってくれることを心から願っています。
令和〇年〇月〇日
住所 東京都新宿区〇〇 〇番地〇 氏名 遺言 太郎 ㊞
まず、「遺言書」という表題を記載し、続けて「遺言者〇〇は、次のとおり遺言する。」と、遺言の意思を明確に示す一文を入れます。
遺産分割の内容は「誰に、どの財産を、どうやって相続させるのか」を、財産の種類ごとに条項を分けて具体的に記載します。分割の対象となる財産は、第三者が見ても特定できるよう、下記のように記載する必要があります。
■ 不動産
……登記事項証明書(登記簿謄本)に記載されている通り、所在、地番、地目、地積などを正確に書き写します。
■ 預貯金
……金融機関名、支店名、預金種別(普通・定期など)、口座番号を明記します。
■ そのほかの財産
……株式であれば会社名と株数、自動車であれば車台番号などを記載し、特定できるようにします。
遺産分割の指定では、財産の一部をなかなか特定してもらえない場合に備え「この遺言書に記載のない財産」の帰属先を指定しておきましょう。
なお、遺言書に記載することで法的な効果を持つ事項(遺言事項)は、遺産分割の指定に限りません。下記のような指定も、必要に応じて可能です。
● 遺言執行者を指定する
● 子を認知する
● 未成年者の後見人を指定する
● 祭祀承継者(お墓や仏壇の承継者)を指定する
● 生命保険金の受取人を変更する
● 最長5年間にわたる遺産分割の禁止
遺言には、付言事項と呼ばれる項目を設けられます。付言事項に法的な効力はありませんが、家族への感謝の気持ちや、なぜそのような財産分割にしたのかという理由を伝えることができます。
せっかく遺言書を作成しても、内容が不十分であったり、法律上の要件を満たしていなかったりすると、その効果が十分に発揮されないことがあります。ここでは、遺言を確実に実現するために意識したいポイントを紹介します。
遺言書を作成するときは、本文を作成する前に「財産目録」を作るとスムーズです。財産および負債の内容がリストアップされていれば、遺産分割を指定するときの抜け漏れ・誤記を防げます。
また、遺言に伴って作成した財産目録は、定期的に見直しましょう。とくに運用中の資産や土地・建物は価値が変動しやすく、遺言書分割方法最新の状態を反映し、必要に応じて遺言の内容も見直しましょう。
兄弟姉妹を除く法定相続人には「遺留分」と呼ばれる最低限の取り分が認められています。遺留分を侵害する遺言も有効ですが、侵害された相続人による請求(遺留分侵害額請求)が始まり、トラブルになるかもしれません。
遺産分割の内容を判断するときは、各相続人の遺留分を把握して侵害しないよう注意しましょう。特定の相続人に多くの財産を遺したいときは、その理由や想いを「付言事項」として遺言書に書き記したり、生前のうちに関係者とよく話し合っておいたりする必要があります。
遺言執行者とは、相続財産の調査・管理や名義変更などの必要な権限が与えられたうえで、遺言書の内容を実現するために必要な手続きを行う人のことです。生前のうちに信頼できる遺言執行者を指定しておくと、遺された人の相続手続きの負担を減らせます。
遺言執行者の指定では、有資格者に制限する決まりはなく、指定方法も遺言書に記すだけとなります。信頼できる特定の相続人を指定することも可能ですが、手続きが複雑であるため、手続きに詳しい弁護士や司法書士とするのが安心です。
自筆証書遺言は手軽に作成できる反面、紛失したり、誰かに改ざんされたりするリスクが伴います。こうした問題を解決するために創設されたのが「自筆証書遺言書保管制度」です。
この制度を利用すると、作成した自筆証書遺言を法務局に預け入れ、厳重に管理してもらえます。そのほかにも、
● 相続開始時に相続人に通知することができる
● 遺言書の検索ができる(相続開始後のみ)
● 相続手続きにあたって「検認」と呼ばれる手続きが省ける
などのメリットがあります。
注意したいのは、預け入れができる条件として用紙・本文の余白など相続法にはない指定がある点です。預け入れの際に確認される内容も、自筆証書遺言の有効性ではなく、形式的なチェックに留まる点に留意しましょう。
遺言書があれば、書面に遺産分割の方法の指定があることで、家族間の協議を経ずに相続手続きを進められます。結果として、遺産分割協議でのトラブルを予防し、手続きの負担を減らせます。
遺言書の必要性や書き方についてわからないことがあれば、相続の専門家である司法書士にアドバイスをもらうと良いでしょう。適切な遺言方式(遺言書の種類)の案内から、生前の希望をどのようにして文面に落とし込むかまで、丁寧なフォローが得られます。